展覧会が終わってから書く展評ってどうなんでしょうか。
だってしょうがないじゃない、会期短いんだもん(オイ)
-------------------------------------------------
伊藤さち個展 「森のとなり商店」
2009年7月21日(火)~27日(月)
ギャラリーきゃべつ畑
絵を描いた布を裂いて編んだ小さなバッグ
カラフルに糸を巻いたかごをつなげたシャンデリア
裂いたプリント布に綿の入ったいろいろの玉を縦につなげた飾り
ファッション、身体論を学んできた作者が、
布と糸により、自分と自分の周りを解体し再構築した展覧会と感じた。
「森のとなり商店」と言う展覧会名には
短い物語が添付されている。
作品は「森のとなり商店の商品」という設定で展示されている。
作品には小さな"商品タグ"がつけられており、
そこにはひとつひとつ違った日付が書かれている。
(商店主の森に住むおばあさんが、商品元の旅人の置き土産を拾った日、という設定)
「森」が現実の社会、あるいは人間の心の表象であるとか、
「一番重いもの」が明日を生活するために置いていく強い感情であるとか、
そういった読み解きはいくらでもできるが、
筆者は物語についてよりも、この展示に仕掛けられた設定に注目したい。
この「商店」という設定、日付の書かれた「タグ」は、
(鑑賞者にとって)非日常なギャラリーでの作品展示 と インテリアやファッションアイテムを買うと言う日常的な行為の橋渡であり、
それが、非常にコンセプチュアルな作品世界と、
「きれいでかわいい」見た目のバランスをとっていた。
思索(試作)の繰り返しと
鑑賞者に寄り添う見た目のかわいさ、かっこよさ。
どちらも物を作って売るためには必要であるが、
どうバランスをとるかが作り手の力量である。
作者は長い付き合いになってきた友人であるので、
彼女の作品を私は大体見ているし、
ことあるごとに制作や価値観についての話をしている。
20代、物事の善し悪しなんて、1冊本を読むたびに、
1本映画を見るたびに、1人と付き合うたびに
どんどん塗り替えられていく時代を生きる彼女の作品世界には、
常に一本のまっすぐな道が見える。
それが鑑賞者の私たちをとてもあたたかい気分にさせる。
インプット、反芻、アウトプット。
ワンピースとか、布に描いた絵とか、ストッキングとか
「何か」だったものを、何ものでもない糸や布に分解し、
作者の世界に再構成する。
「ばらして つなげる」これが私に見えている彼女の一本の道である。
この道が見えている限り、きっと彼女の作品世界は深化を続けるであろう。
コメントする